不妊治療の「適度な運動」が辛い人へ。頑張りすぎない妊活を心理職が考えてみた

「頑張りすぎない」不妊治療とは?
こんにちは。カウンセリングオフィス東京anoneの平井です。
不妊治療やメンタルヘルスの文脈に限らず、日常のなかで「頑張りすぎないでね」「無理はしないでね」という言葉をかけられることはありませんか?
言われてホッとしたり、肩の力が抜ける瞬間もありますよね。でもその一方で、生真面目な方ほどこう思ってしまうのではないでしょうか。
「……で、具体的に『頑張りすぎない』ってどうすればいいの?」
妊活のために嫌々ジムに通ったり、続けられない自分に罪悪感を持ったりしていませんか?
この記事では、運動が死ぬほど苦手な私(臨床心理士)の実体験をもとに、以下の内容をお届けします。
・不妊治療中の「運動がつらい・続かない」という罪悪感を消す方法
・心と体の負担を減らす、自分だけの「納得のいく妥協点」の探し方
・心理職の視点でひも解く、本当の「頑張りすぎない」の定義
「体にいいこと」が大の苦手で、自他ともに認める(?)しつこく面倒くさい性格の私が、不妊治療中の苦い経験を通して行き着いた「頑張りすぎない状態の定義」についてお話しします。
1. 妊活の基本「適度な運動」という呪い
不妊治療を始めると、必ずと言っていいほど耳にするのが「健康的な体づくり」や「体質改善」という言葉です。
特に「適度な運動」。
運動神経が壊滅的で、幼少期からスポーツ全般を避けて通ってきた私にとって、この5文字は喉の奥がキュッとつままれるような、苦しさを感じさせるものでした。
頭では大切だとわかっていても、どうしてもやる気が起きないのです。
とはいえ、私も根が真面目な性分。一念発起して、近所のスポーツジムの月極会員になり、嫌々ながらも以下のメニューを週2~3日ペースで始めてみることにしました。
- 軽めの筋トレ
- ウォーキング
- 初心者向けのヨガ
仕事に行く前から「終わったあとのジム、憂鬱だな……」「早く家に帰って漫画を読みたい、お菓子を食べたい」という煩悩と戦いながら、なんとか1ヶ月つづけました。
1ヶ月後、体重や筋肉量に変化が出なくて完全にやる気を失います。
ただし購入してしまったプロテイン代の元をとらなければ、妊活のためにいかなければならないと、なんとか気持ちを奮い立たせて週2日に回数を減らして続けました。
2.「体に良くても心に悪い」なら本末転倒?
そもそも、なぜ不妊治療でここまで運動が推奨されるかというと、血流を良くして骨盤内の環境を整えたり、ストレスを発散してホルモンバランスを安定させたりするためと言われています。
理由は重々わかっている。わかっているが…(前項のジムに行くのが毎回、死ぬほど憂鬱、に戻る)
そして、継続の甲斐もあって筋肉量は徐々にわかりやすく増えていきました。
動いた後の爽快感や、運動後のお風呂タイムは確かに気持ちが良かったです。
……が、それでも「ジムに行くのが毎回、死ぬほど憂鬱」という事実は変わりませんでした。
時間が経てば慣れるかと思いきや、私の場合はそう甘くなかったのです。
ジムに時間を割くことで、自分が本当にやりたいことができない状態そのものが、大きなストレスになっていたのです。
次第に週2日のペースは週1日に落ち、「コンスタントに通えない自分」への罪悪感が募り、さらに足が遠のく……という、よくある三日坊主に毛が生えたようなスパイラルに陥りました。
そこで、ふと気づいたのです。
「体に良くても、心に良くないことであれば、それって心身のバランスが整った『適切なアプローチ』とは言えないんじゃないか?」
(※都合の良い解釈含み)
そもそも、特別な運動を一切しなくても妊娠できる人はいる。
なら、ジム通いは必須条件ではないはず。
「なんで自分ばかりこんな嫌な思いを……」というひねくれた思いもよぎり、私は自分にとっての「頑張りすぎない運動」を模索し始めました。
3.「頑張りすぎない運動」を模索
ここで、私の学生時代の苦い思い出が役に立ちます。
当時、世界史で大学受験をしようと決めていた私ですが、学校のクラスでは日本史も必修でした。
暗記のキャパも時間もなく、何より日本史が苦手でやりたくない。
悩んだ末に私が取った行動は、「受験に使わないから極力勉強はしたくないけれど、赤点と留年は免れたいから、教科書を丸写しした最低限のノートを作って提出し、ギリギリでしのぐ」というものでした。
ベストな選択ではないかもしれませんが、当時の私なりに「リスク」と「ベネフィット」を天秤にかけ、妥協させた行動だったと言えます(日本史の先生、ごめんなさい)。
妊活の運動もこれと同じように考えることにしました。
心の負担にならない程度で、かつ最低限は体を動かせる「納得のいく妥協点」を探すことにしました。
その結果、行き着いたのが次の2つです。
試して行き着いた妥協運動
- 夜寝る前に、とりあえず5分だけYouTubeを見ながらストレッチやヨガをする
(内容はリラックス優先で負担の少ないものを選ぶのがコツ。あと、5分やるともっとやりたくなる不思議。) - 週末、30分程度のジョギングに家族に連れて行ってもらう
(自分にとってはハードなため、家族に半ば強制的に引きずり出してもらい、終わったらご褒美ジュースを飲む。人を巻き込むとサボりにくくなるのでオススメです)
ジムはビジター利用に切り替えました。ジムに通い詰めていた頃に比べれば体質改善のスピードは落ちたかもしれませんが、「運動した達成感」と「やりたいことに時間を使える満足感」が両立し、心理的ハードルが劇的に下がりました。
今流行りの言葉でいうと、嫌なことだけど必要なことをせざるを得なくする「仕組み化」をしたのです。
そして完璧ではないかもですが、自分では十分やった気になれたので、これで運動は「ヨシ!」としたのです。
ちなみに、私のように「ヨガやジョギングすらちょっと……」という方は、以下のような『わざわざ運動の時間を取らない工夫』から始めてみるのもおすすめです。
- エレベーターを使わず、意識して階段を使う
- 歯磨きをしながらスクワットを数回だけする
- 買い物の時に、あえて少し遠いスーパーまで歩いてみる
大切なのはジムに入会することではなく、「日常のなかで少しでも血流が良くなればヨシ!」と思える仕組み作りです。
4. 心理職が考える「頑張りすぎない」の本当の定義
今回の経験を経て、臨床心理士という専門職の視点からも改めて検討してみた結果、不妊治療における「頑張りすぎない」とは、以下のような状態を指すのではないかと推察されます。
- リスク(心の負担・ストレス)とベネフィット(身体的効果)の均衡が取れている
- 心が病まない程度の行いである
- その妥協案に、自分自身が納得できている
一番のポイントは、「完璧ではない状態を、自分自身で『ヨシ』とできるかどうか」。
周囲のアドバイスや「こうあるべき」に主導権を渡すのではなく、自分でハンドリングして「これでヨシ!」と決めて良いのだと思います。
(ちなみに、この妥協案に切り替えてからも、運動を始めてからのホルモン基礎値のデータは若干改善・安定したので、それなりの効果は出ていたようです!)
最後に声を大にしてお伝えします。
皆さん、運動は体に良いので、苦手でなければぜひ積極的に取り入れてくださいね!(笑)
最後に(お知らせ)
・今後取り上げて欲しいテーマがあればお知らせください。
不妊治療当事者の方(男女問わず)でも、ご家族や職場の方でも結構です。
参考にさせていただきます。
・心理学に関するメディア取材や記事監修も承ります。
当カウンセリングオフィスでは、臨床心理士によるオンライン不妊カウンセリングを行っています。
思い立った時に、ご自宅からリラックスしてお話しいただけます。
オンラインカウンセリング・対面(女性のみ)ともにご利用いただけます。


