【PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)】妊活におけるラパロドリリング/腹腔鏡下卵巣多孔術は効果がある?体験レポート

こんにちは。カウンセリングオフィス東京anone(あのね)の平井です。
当カウンセリングオフィスでは、大人の女性のメンタルケアや、妊活・不妊治療に伴う心理的サポートを行っています。
妊活や不妊治療は「先の見えないトンネル」に例えられるほど、心身に大きな負担がかかるものです。
特にPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、根本的な治療法が見つかりにくく、孤独感や焦りを抱え探り探り治療を続けている方も少なくありません。
今回は、治療の選択肢の一つである「腹腔鏡下卵巣多孔術(ラパロドリリング)」について、私自身の過去の治療体験を交えながら、概要やメリット・デメリット、実際のスケジュールをまとめました。
ちなみに、この手術は健康保険適応の手術です。
2023年4月に対外受精の保険適応がなされ、この手術の需要は減少傾向にあるかもしれませんが、保険の回数が上限を超えてしまった際のステップダウンの治療法として検討されているかたもおられるかもしれません。
現在、PCOSや不妊治療で行き詰まりを感じている方の情報収集や、心の整理に少しでも役立てば幸いです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?
多嚢胞性卵巣症候群(以下、PCOS)の詳しいメカニズムについては、あすか製薬さんのWebページが非常に分かりやすくまとめられているので、ぜひご参照ください。
https://www.aska-pharma.co.jp/mint/womanhealth/joseinobyoki/byoki04.html
簡単に言うと、「本来なら毎月1つ成熟して排出されるはずの卵子が、何らかの理由で一度に複数育ってしまい、結果としてうまく排卵できずに月経異常や不妊を引き起こしてしまう」という体質の病です。
排卵されずに卵巣内に留まった卵子は、時間の経過とともに小さくなって体内に吸収されますが、超音波(エコー)で見ると、これらが真珠のネックレスのように連なって見えるのが特徴です。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査での特徴
生涯の残り卵子数を予測するAMH検査では、30歳の標準値が 4.02ng/ml(※)とされるのに対し、PCOSの患者さんは 「8ng/ml」や「10ng/ml」といった高い数値が出ることが多くあります。
これは「それだけ中途半端に育っている卵子(母数)が多い」ためです。
軽度であれば治療なしで自然妊娠できる場合もありますが、重度の場合は不妊治療が必要になるケースが一般的です。
※参考:誠心堂薬局AMH(抗ミュラー管ホルモン)について
PCOSの一般的な治療アプローチ
PCOSの治療は、現時点で「妊娠を希望しているかどうか」によってアプローチが大きく異なります。
1. 妊娠を希望しない場合(現在はパートナーがいない場合など)
すぐに病気そのものを根治させるというよりは、「これ以上症状を悪化させない・子宮の機能を保つ」ためのコントロールが中心となります。
- ホルモン剤による周期のコントロール:低用量ピルや黄体ホルモン剤を使い、定期的に出血(消退出血)を起こして子宮が休止状態になるのを防ぎます。
- 生活習慣の改善・漢方:PCOSは肥満や糖尿病のリスクと親和性が高いため、運動や食事管理が推奨されます。また、体質改善を目的として東洋医学(漢方)を取り入れる方もいます。
- 血糖値を安定させる薬の服用:家族に糖尿病の既往がある場合や、血液検査の結果によっては、糖尿病の治療薬(メトホルミンなど)を併用して体質改善を図ることもあります。
2. 妊娠を希望する場合
症状の重症度に応じた不妊治療が提案されます。
軽度であれば飲み薬や注射による「排卵誘発剤」で様子を見ますが、無月経などの重度の場合、薬の刺激によって卵巣が腫れ上がるリスク(OHSS:卵巣過剰刺激症候群)があるため、最初から体外受精を勧められるケースもあります。
PCOSの治療の過程で、私が感じた「心のつらさ」
ここで、少しだけ私自身の当時の心境をお話しさせてください。
PCOSの治療中、私は次のような部分に強いストレスや手持ち無沙汰さを感じていました。
- 「すぐに根治できる薬」がない焦り:今すぐ不妊治療をしない期間、自分ができる具体的なアクションが少なく、ただ時間を費やしているような焦燥感がありました。
- 効果が見えにくい不安:ピルで定期的に出血を起こしていても、それが「卵巣機能の回復」につながっている実感が持てず、先の見えない不安を感じていました。
- ステップアップの選択肢が狭まる戸惑い:「まずはタイミング法から…」と思っていても、症状の重さからいきなり体外受精を提示されるなど、心の準備が追いつかないこともありました。
「白黒はっきりつけたい」気質の私にとって、10代の学生時代にこの体質が発覚した際、劇的な改善アプローチがないことは精神的にもかなり堪えました。
そんな中、さまざまな情報を集める中で出会った選択肢が、今回ご紹介する「腹腔鏡下卵巣多孔術(外科手術)」でした。
腹腔鏡下卵巣多孔術のメリット・デメリット
腹腔鏡下卵巣多孔術とは、おへそと下腹部に小さな穴を開けて腹腔鏡を挿入し、両側の卵巣の表面に電気針で複数の小さな穴を開ける手術です。卵巣の殻を少し通りやすくすることで、自力での排卵や薬への反応を促します。
メリット
・術後、比較的高確率で自発排卵が期待できる
・排卵誘発剤の効き目が改善しやすい
・健康保険や医療保険、高額療養費制度が適用される
デメリット
・効果は一生続くわけではない(一般的に数ヶ月〜1年程度)
・体質そのものが完治・根治するわけではない
経済的な負担を抑えられる選択肢
体外受精などの高度生殖医療は、治療内容によっては自己負担が大きくなり、経済的な不安がストレスになることも少なくありません。
また年齢による保険適用の回数制限に達した場合、自費負担による治療も考慮しなくてはいけません。
この手術は医療保険の対象となるため、費用面のハードルを下げられる点は大きなメリットだと感じました。
1泊2日の手術体験レポート(2020年12月実施)
私が実際にこの手術を受けた際の流れをまとめました(※コロナ禍初期の体験です)。
手術を受けるまでにしたこと(準備期間:約2〜3ヶ月)
- 病院探し:少しマイナーな手術のため、婦人科や不妊治療に力を入れている病院へ電話で問い合わせました。
- 紹介状の手配:かかりつけの婦人科から、手術を行う病院への紹介状を書いてもらいました。
- 保険の確認:加入している医療保険の会社へ、手術給付金の対象になるか確認。
- 初診・手術日の決定および各種術前検査(通院は2回程度)。
- 高額療養費制度の申請(限度額適用認定証の取得。マイナンバーと紐づけているならば現在は不要)。
※私が受診した病院は男性不妊にも注力していたため、パートナー側の状況の聞き取りや検査も非常に親身に対応していただけました。
入院〜手術当日のスケジュール
【前日】 特に入院準備などはなく、夜からの飲食制限(絶食)のみ。
【当日・術前】 朝、指定の時間に病院へ集合して着替え。前処置などは一切なく、非常にスムーズでした。
【当日・手術】 お昼頃に手術室へ。全身麻酔だったため、体感としては「あっけなく終了」でしたが、実際の手術時間は2時間ほどだったようです。
【当日・術後】 おへそと下腹部左右の計3箇所に穴を開けたため、刺されたようなチクチクとした痛みはありました。ただ、痛み止めを処方してもらえば、自力でベッドの上に上体を起こせるレベルです。 医師から「卵巣に数十箇所ずつ穴を開けました」と写真を見せてもらいましたが、卵巣自体の痛みは驚くほどありませんでした(卵巣が「沈黙の臓器」と呼ばれる理由を体感した瞬間です)。
- ※個人的に一番つらかったこと:麻酔の影響か、手術時にお腹を膨らませるために使ったガスが抜けきらなかったせいか、術後は一晩中激しい吐き気に襲われました。術後の食事が美味しくて完食したものの、その後翌朝までに4回ほど嘔吐してしまいました。
【翌日(退院)】 朝の診察で問題がなければ、そのまま退院となります。体調に合わせてタクシーや公共交通機関で帰宅しますが、麻酔の残りや体力の消耗もあるため、可能であればご家族に付き添ってもらうことをおすすめします。
術後の経過と費用
- 傷口の痛み:約2週間ほどで消失しました。
- 傷跡(数ミリ程度):完全に綺麗になって目立たなくなるまでには、2年ほどかかりました。
- 費用:高額療養費制度と民間医療保険の給付金を活用した結果、最終的な自己負担は実質ゼロでした。
- 効果の時期:手術の翌々月の血液検査(ホルモン基礎値)で、すでに正常値を示し、私の場合それ以降2025年に至るまでホルモン基礎検査で異常は示されず、即効性と持続性を実感しました。
💡 持っていってよかったもの
夜中に吐き気が落ち着いた後、口にできるような「ゼリー飲料やジュース」にとても救われました。
術後の変化とまとめ
私自身は、この手術を受けてホルモンバランスが非常に安定したのですが、
他の要因もその後重なって、最終的には体外受精を再度行ない出産に至りました。
「じゃあ、手術の意味はなかったの?」と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
手術のおかげで排卵誘発剤の反応が劇的に良くなっていたため、採卵周期に使う薬剤の量を大幅に減らすことができ、結果として過去に経験したOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の再発を防ぐことができました。
これは働きながら体外受精を進める上でも大きなメリットでした。
当時この手術を選択して本当に良かったと思っています(効果の持続期間には個人差があります)。
ただし侵襲性の高い手術ですので、一概にはすすめません。
不妊治療は、身体の治療であると同時に、「選択の連続」による心の疲弊との戦いでもあります。
この記事が、PCOSの治療選択肢に悩む方のひとつの参考材料となり、少しでも心の見通しを立てるお手伝いになれば幸いです。
もし、不妊治療に伴う不安や、誰にも言えないストレスを抱えている時は、いつでも当カウンセリングオフィスにご相談くださいね。あなたの心に寄り添い、一緒に整理していくサポートをいたします。
最後に(お知らせ)
・今後取り上げて欲しいテーマがあればお知らせください。
不妊治療当事者の方(男女問わず)でも、ご家族や職場の方でも結構です。
参考にさせていただきます。
・心理学に関するメディア取材や記事監修も承ります。
当カウンセリングオフィスでは、臨床心理士によるオンライン不妊カウンセリングを行っています。
思い立った時に、ご自宅からリラックスしてお話しいただけます。
オンラインカウンセリング・対面(女性のみ)ともにご利用いただけます。

